10兆円というお金は億り人1万人分、兆り人10人分
2019年度の上場企業の自社株買いの総額が10兆円を越える見込みであることが、昨日の日経新聞に掲載されていました。
10兆円と聞いて実感を持つ人間は果たしてどれだけいるのでしょうか?
あまりにも大きい金額なので私はあまり実感がありません。
投資をしているサラリーマン個人投資家なら憧れの目標として、億り人という存在がありますが、しかし億り人と称えられる存在でさえ、金融資産は1億円です。
その1億円の1万倍が10兆円ですから、なかなかイメージしにくいのも当然と言えます。
1億円の億り人が1万人分ですからね。
もし私が億り人になってしまったら、きっとこの世の中は自分を中心に回っていると錯覚してしまうでしょうし、それを遥かに超える兆り人(ちょうりびと、金融資産1兆円を保有する人)になってしまったら、宇宙すら征服した気分になってしまうでしょう。
1兆円を持っている兆り人が10人いて、やっと10兆円です。
ちなみに兆り人は世界でもごく限られた人間しか達成している人はいませんが、 投資の世界だとあの世界一投資家のウォーレン・バフェット氏が約10兆円と言われていますので、そのくらいの規模の金額が自社株買いされていることになります。
他に兆円の単位で思いつくところと言えば、日本の税収が約60兆円、国家予算が約100兆円ですが、もはやそういう規模のお金の大きさですから、何が何だか良く分からない金額です。
自社株買いは株主への利益還元策の1つ
10兆円という金額はともかくとして、自社株買いは株主への利益還元策の1つと言われています。
自社株買いとは上場している会社が、市場に流通している自社の株式を投資家から買い戻すという行為です。
自社株買いを行うことによって市場に出回っている発行済み株式総数を減少させることができます。
そうするとみかけの1株益が上昇するので、株主還元策となり得るのです。
簡単に具体例を挙げると、例えば1億円の純利益を稼ぐ会社が100万株の株を発行していたとすると、1株あたりの利益(1株益)は100円となります。
1億円 ÷ 100万株 = 100円/株
ここで会社が自社株買いを行い、市場に流通している20万株の株式を投資家から買い戻したとすると、市場に流通する株式は80万株になりますので1株益は125円となります。
1億円 ÷ 80万株 = 125円/株
このように会社が自社株買いを行うと、1株益が上昇するので株主が保有している株式の価値を高めるという効果を発揮するのです。
故に自社株買いは株主還元策の1つとなり得ます。
自社株買いは会社にとってもメリットがあります。
株主へ純利益を配当金という形で処分するとき、本来であれば100万株に対して配当金を支払わなければならないところ、市場に流通している80万株分の株主に対して配当金を支払えば良いことになるので、20万株分の配当金は支払う必要がなくなります(20万株分の配当金は会社に戻ってきます。)。
ですので、自社株買いは株主にとっても会社にとっても、メリットのある方策の1つなのです。
株主への最大の還元策は自社株買いではない
自社株買いは株主への利益還元策の1つではありますが、自社株買いよりも株主がもっと喜ぶことがあります。
それは何でしょうか?
ちなみに株主優待じゃないですよ。笑
それは株主のお金である純利益をもっと増やすように会社がもっと努力することです。
会社が株主のためにもっと純利益を増やすためには、売上を増やす必要がありますが、そうなると事業を拡大をする必要があります。
事業を拡大するためには、会社がこれまで稼いだ純利益やこれまで会社に溜め込んでいる内部留保を、設備投資や広告宣伝費などに積極的に使うことが不可欠でしょう。
そうやって毎年のように純利益を増やしていき、ROEを維持または高めていくことが、本来の会社の姿であり、自社株買いよりも株主が喜ぶ還元策なのです。
とは言っても、まぁ企業側としては、表向きは株主のために純利益を稼ぐために頑張っているという体になっていますが、実際のところ純利益を全て株主に持っていかれたら多少なりとも不満はあるでしょう。
できれば内部留保したいというのが企業の本音だと思いますが、資本主義の仕組みの中でお金を稼いでいる以上、本音ばかりを言うわけにもいきません。
それに世の中の景気循環などもありますので、常に積極投資というのも難しいと思います。
だからと言って純利益を内部留保ばかりしては、さすがに株主は黙っていないのでしょう。
そういう状況を考えると、自社株買いというのは会社と株主の間の希望を折衷した形だと言うこともできます。
自社株買いをする行為は悪くは無いですが、純利益を常に増やし続け株主のお金を増やしてくれることが、会社の存在意義なのですから、そういうお金の使い方を常に模索している会社は、投資家にとって投資対象として魅力的な会社に映るのではないでしょうか。
そういう会社を見つけて投資をすることで、将来は億り人や兆り人の仲間入りをしてみたいですね。
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